人と人をつなぐ「たすき」となり
人事労務管理全般をサポートします
にのだん社会保険労務士事務所だより「たすき」令和7年4月号(No.65)
【①保険料率の変更の仕組み】
令和7年3月分からの健康保険料率と介護保険料率は以下のとおりに変更となりました。(和歌山支部)
健康保険料率は10%から10.19% 介護保険料率は1.6%から1.59%
私がかつて和歌山県内にある健康保険組合で勤務していた頃は、毎年度予算編成をする中で健康保険料率と介護保険料率を設定していました。健康保険料は①基本保険料と②特定保険料(これをあわせて一般保険料といいます)に構成されます。(健康保険組合は交付金交付事業のための拠出金である③調整保険料が別途あり)
医療保険を運営する健保組合など保険者が負担するべき保険給付(いわゆる医療費の7割や高額医療費、傷病手当金、出産手当金、出産育児一時金など)を補うだけであれば、必要となる保険料は①の基本保険料のみで済みますが、日本全体の高齢者医療制度を支える目的で前期高齢者納付金や後期高齢者支援金の負担が各保険者に求められるため、その財源として②の特定保険料も被保険者が負担する健康保険料に含まざるを得ない仕組みとなっています。
しかし、これは国民皆保険制度を支えるための貴重な財源であり、現状では、働き盛りの現役世代から高い社会保険料を徴収する仕組みとして、毎年度、医療費の変動にあわせて必要最低限の保険料率が毎年変動するルールになっています。社会保険に加入する従業員さんからすれば「毎年なぜ保険料率が上がったり下がったりするのか?」「社会保険料率が高すぎる」という不満の蓄積になり、場合によっては「健康保険料率の安い保険者に加入する会社に転職しよう」「そもそも社会保険に入りたくない、払いたくない」と考える若い従業員さんも出てくるかもしれません。
毎回言うことですが、厚生年金保険料も含め社会保険料は被保険者負担のみならず会社側も高額な保険料を半分以上負担している最大の福利厚生であることを、春から入社する新入社員さんには正しく伝えて、ぜひ理解して頂きたいと感じます。
【②高校授業料無償化】
最近ニュースで取り上げられていたとおり、令和7年度、8年度と段階を踏んで高校授業料無償化の世帯年収の所得制限が撤廃され、公立、私立を問わず高校の授業料については所得に関係なく実質無料になります。これに伴い地方では「進学先を公立から私立に変えよう」という割合は、私立高校の数や通学の距離も考えると急激に高くなるとは言い難いかもしれませんが、都会では私立高校の数もかなり多いことから、年間の負担額の差が大きくなければ、設備が整っている私立高校が支持され、公立高校の志願者数が減る可能性は高いかもしれません。
しかし「それは仕方ないだろう」と考えるのではなく、公立高校は志願者をこれ以上減らさない(今以上に増やす)改善策を真剣に考えるべきではと私は感じます。
例えば、私の息子が現在通っている高校(私の母校)は、ここ数年少子化の影響もあり、連続して志願者数が定員を割っている状態が続いています。私が受験した頃は学区制により、決められた地区の高校しか受験出来ないルールがあり、志願者も20人ほどオーバーしていたと思いますが、現在は学区も廃止され、通学が可能な県中心部の高校に志願者が集中するなど競争による影響を受けていると感じます。
息子が通う高校も65分授業など特色を出そうとしていることは評価しますが、学校の集合時間が8時15分と早めに設定されており、息子のように電車通学する側とすれば、学校の最寄り駅到着時間8時11分の電車(出発時間7時40分)では集合時間に間に合わないので、結局1本早い7時7分の電車に乗らざるを得ない状況となります。
学校との距離が離れている受験生は最初の段階で「この高校は通学が不便だからやめよう」と進学先として選ばれない外的要因のひとつになっているのかもしれません。学校の理念は尊重すべきですが、電車の到着時刻に合わせて始業時間も臨機応変に対応するなど、志願者数を1人でも増やす工夫をひとつでも多く再考して欲しいと卒業生として願うばかりです。
市町村の人口の増減についても同じことが言えるのではと感じます。「県全体の人口は減少しているのだから市の人口が減少するのも仕方ない」と単純に諦めるのではなく「利便性のある住みやすい場所である」「公共サービスが良い」など支持を受ける政策やPRが伝われば、県全体の人口が減少する中でも、周辺から人が集まり人口減少を食い止めている市町村になることは不可能ではありません。これは今後より競争力が求められる公立高校においても同じことが言えると感じます。
~最後までお読み頂きありがとうございました~